高気密な家って本当に快適?「気密測定」のベストタイミングと、その知られざる重要性

高気密な家って本当に快適?「気密測定」のベストタイミングと、その知られざる重要性

「夏は涼しくて、冬は暖かい家」
誰もが憧れる、快適で省エネな暮らしですよね。

その鍵を握るのが、家の「断熱性」と「気密性」です。断熱についてはよく聞くけれど、「気密」って一体何でしょう?実はこの気密こそが、住まいの快適さを左右する、縁の下の力持ちなんです。

私自身、以前ある住宅の検査に立ち会った時、ほんのわずかな隙間から入り込む冷気や湿気が、いかに住み心地を悪くするかを目の当たりにしました。その経験から、気密の重要性を強く認識するようになりました。

まず、住宅にはそこそこ隙間があるという事実に驚かれる方も多いと思います。
例えば、延床面積35坪の住宅において、気密性能を表すC値が1.0とするとしましょう。その場合、家の壁中の隙間を全部集めると1万円札より少し小さいくらいの隙間になるのです。(厳密なことを言うと、階高や断熱材の位置によって数値は変わりますが)

そう考えると、結構隙間があるなということがわかると思います。

高気密な家って本当に快適?「気密測定」のベストタイミングと、その知られざる重要性

「C値」って何?気密性が高いと、どんないいことがあるの?

家の気密性は、「C値(シーち)」という専門の数値で表されます。これは「家にどれくらい隙間があるか」を示すもので、数字がゼロに近いほど「隙間が少なくて気密性が高い家」ということになります。

では、気密性が高いと、具体的にどんなメリットがあるのでしょうか?

エアコンの効きが良くなる:
隙間風がないので、冷暖房の熱が逃げにくく、光熱費の節約につながります。

結露やカビを防ぐ:
壁の中に湿気が入り込むのを防ぎ、家の構造を長持ちさせます。結露が減るので、アレルギーの原因となるカビの心配も少なくなります。

部屋中が快適な温度に:
「足元だけスースー寒い…」といった温度ムラがなくなります。

キレイな空気環境を保つ:
計画的な換気がしっかり機能するので、花粉やPM2.5といった汚染物質が家の中に入りにくくなります。

最近の高性能な住宅では、C値1.0以下が一つの目安。鳥取県の「とっとり健康省エネ住宅NE-ST」など、地域の基準でもこの数値が求められることが多くなっています。

いつ測るのが正解?気密測定、ベストなタイミングは「壁を閉じる前」!

この大切な気密性、実は「いつ測定するか」が非常に重要です。

結論から言うと、ベストタイミングは気密施工を行った後、壁の仕上げ材(石膏ボードなど)で隠れてしまう前の「中間時」です。

なぜなら、この段階で測定すれば、万が一隙間が見つかっても、その場で簡単に直せるからです。

問題の発見と修正がとにかく楽!

完成してからでは見えない壁の中や天井裏の隙間も、この段階なら一目瞭然。配管やコンセント周りなど、隙間ができやすい場所をピンポイントで修正できます。

もし完成後に「気密性に問題アリ」と分かったら、壁を剥がすなどの大掛かりな工事になりかねません。中間時なら、ちょっとした補修で済むことがほとんどです。

これは私自身が現場で体験したことですが、壁を閉じる前の中間測定で、換気ダクトの周りに思いがけない隙間を見つけたことがあります。これ、もし塞がれずに引き渡しになっていたら…と考えると、本当にヒヤッとしました。
でも、このタイミングだったからこそ、職人さんがその場でサッと隙間を埋めてくれて、気密性能が劇的に良くなったんです。「見えなくなる前のチェック」がいかに大事か、身をもって感じた出来事でした。

入念に気密施工をしたと思っていたとしても、測定してみると、初歩的な漏れが見つかることもあるものです。

もちろん完成後の測定も必要
もちろん、完成後に行う「最終時」の測定にも意味はあります。その家の最終的な性能を証明するために必要なのです。ただ、ここで大きな問題が見つかると修正が大変なので、あくまで「最終確認」と考えるのが良いでしょう。

ここに注意!気密施工でよくある落とし穴

正しく施工すればメリットだらけの高気密住宅ですが、知識や技術が伴わないと、かえってトラブルを招くこともあります。

夏型結露のリスク:
特に注意したいのが、夏の結露です。エアコンで冷えた室内に、わずかな隙間から湿った空気が侵入すると、壁の中や床下など、見えない場所で結露やカビが発生することがあります。

基礎断熱の注意点:
床下も室内と同じ環境と考える基礎断熱では、基礎と建物の間の気密処理が非常に重要です。ここが甘いと、湿気が床下に流れ込み、カビの原因になります。

屋根の断熱と換気:
屋根断熱の場合、換気口が断熱材で塞がれてしまい、小屋裏に湿気がこもって結露するケースも。見えなくなる部分だからこそ、施工前のチェックが欠かせません。

まとめ:確かな気密施工が、家族の快適な未来をつくる

高い断熱性能を活かし、健康で快適、そして省エネな暮らしを実現するために、高い気密性能は絶対に欠かせない土台です。

丁寧な設計と施工、そして「中間時」の気密測定。この一手間を惜しまないことが、将来にわたって安心できる住まいにつながります。

高気密住宅に住み始めた方からは、

「冬でも裸足で過ごせるようになった」
「ジメジメ感がなく、エアコンを少しつけるだけで快適」

といった嬉しい声をよく聞きます。
こうした声を聞くたびに、「確かな気密施工が、人々の暮らしを豊かにするんだ」と改めて実感します。